「愛美さぁ。無理してるよね。シフトもすごい入ってるし」
「別に別に。お金貯めたいし。何か心配かけてごめんね」
バイトの休憩中、バックヤードで友達とだべる。
学校で仲の良い友達は、中学から一緒で気の合う子が多い。
でも、お兄ちゃんとの関係だけは誰にも打ち明けていなかった。
伝えてあるのは、半年前に親が再婚して引っ越しをしたこと。
義理の父と兄ができたこと。
先日、その兄が死んだこと。ここまで。
「でも最近誰かとラインしてるよね。ねー誰? 誰?」
「んー。何かオタクな男子。最近知り合って」
「まじ? 愛美そういうのタイプじゃないっしょ?」
「うん。全然タイプじゃない。だから新鮮でさ~」
「へぇ、見た目は?」
「顔自体は悪くないけど、雰囲気はもっさい。あとメガネ」
うわー何それ! と圭太の話題で友達と笑い合う。
そういえばあいつとここ最近会ってない。
何してるんだろ。
帰りの電車で『何してんの?』と圭太にラインをしてみる。
『スーパーにいる。母さんがネギ買い忘れたらしくてお使い』
『足大丈夫なの?』
『ちょっとずつ荷重できるようになって。こき使われてる』
『スーパーって駅から近いとこ?』
『うん』
『私ももうすぐ駅着くんだけど』
お母さんが帰るのはあと1時間くらい後になるらしい。
それまで時間がつぶせればよかった。
ほんの少しだけ、彼の顔を見たかったのもある。

