後ろに1人で座る私は、窓の外を流れるゆるい景色を眺めていた。
お墓の近くも料亭のあたりも、建物が少なくて緑がいっぱいの風景だった。
今、住んでいるのは都会のベッドタウン。
まわりは家やマンションばっかり。
何か安心する。またこういうところ、来たいなぁ。
「そうだ、愛美。今晩ご飯お願いしていい? ちょっとおばあちゃんのとこ行ってくるから。今日中には帰るようにするけど」
急にお母さんが振り返り、声をかけてきた。
「え。私今日バイトだし」
私はそう答えたが、
「何時ごろ終わるんだ? 最近、駅前危ないらしいから車で迎えに行くぞ」
とお父さんが会話に割り込んでくる。
「いらないよ。別にいつも普通に帰ってるから」
私はお母さんに変に思われないよう、上手く突っぱねておいた。
しかし、お父さんは「アルバイト辞めてもいいんだぞ。買いたいものあったら言ってくれれば」と続けてきた。
「は? やだよ。バイト楽しいし。友達と一緒だし。いろいろ勉強にもなるし」
愛美……、とお母さんが渋い表情で私の言葉を止めようとする。
「あ、次の信号前で降ろして。そのへんの駅から行った方が近いから」
構わず私は車から降り、バイト先へと向かった。

