お兄ちゃんが死んでから、
お父さんもお母さんも一切泣くことは無かった。
動かなくなったお兄ちゃんを前に泣き崩れたのは、私だけ。
2人ともそんなに悲しくないの? と複雑な気持ちになった。
納骨が終わり、3人で料亭でご飯を食べてから帰路についた。
「いろいろ大変だっただろ。これでひと段落だな」
「……そうね。まあ、今度は私のお母さんが危ないけど」
お父さんが運転する車の中。
慣れない葬式関連の行事が続いたお母さんは、はぁ~とため息をついていた。
おばあちゃんも今体調が良くないし、いろいろと心労がたまっているらしい。
運転席と助手席の2人は色々と話をしている。
こういう時間だけは、普通の家族に思えるのが不思議だ。

