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「いい天気ね」
「そうだな。空に旅立つのにちょうどいい日だ」
開けた青空の下、緑色の芝生の間を進むと、
等間隔に並んだたくさんの墓石が見えてくる。
私は、喪服姿のお父さんとお母さんの後ろをセーラー服姿でとぼとぼと歩いていた。
菊やカーネーション、りんどうが混ざったカラフルな花束を抱えて。
お兄ちゃんが死んで49日が経った。
葬式とは違い、家族3人だけでこの日を迎えた。
骨壺がお墓の下に埋められ、石のフタが閉じられる。
一定のトーンでお経を唱えるお坊さんの声が、体の中に染み入っていく。
まわりのお墓を見ると、枯れて色を失った花が風に揺れていた。
お兄ちゃんのお墓だけ、あふれるように色彩豊かな花が咲いている。
まるで生きているかのよう。
お坊さんの合図により、お墓へ近づいた。
お父さん、お母さんに続いて抹香をつまみ、小さな煙の中へ落とした。
これで儀式は終わった。
そう自分に言い聞かせるものの、胸が詰まった。
ぽんと頭を手に置かれる。
ビクッと体が震えた。隣にいるお父さんだった。
ぷるぷるとポニーテールを揺らしながらそれを払う。
こいつの前で泣くもんか。
歯をくいしばって耐えた。

