きたない心をキミにあげる。




「ごちそうさまでした。ありがとうございます」


「最近圭太あんまりご飯食べてくれないからさー。ちょうど良かったよ」



母は食卓に座っている愛美と俺を交互に眺め、嬉しそうな表情を浮かべた。



愛美は家に泊まっていくことになった。


俺の家はマンションで、リビングやお風呂などの他には、母と俺の部屋しかない。


リビングのソファーはひじ掛けと背もたれを倒すとベッドになるため、愛美はそこで寝ることになった。



「圭太、あんた襲いに来るんじゃないよ!」


「は? 何だよそれ。てかこの体じゃ無理だって!」


と母に反論しつつも、

俺の中学時代のジャージをだぼっと着る愛美に、少しだけ胸がときめいたのは事実だった。



「それより、ここでよく母さんテレビ見たままよだれ垂らして寝てるし臭いかもよ……ってあいたたた!」



母に思いっきり耳をつねられる俺を見て、愛美は笑った。



見るな、俺! と思いつつも、その表情に目がいってしまう。


大きな目を細め、頬と口角をきゅっと上げた無邪気な笑顔。



俺と母さんだけのいつもの空間に、きれいな花がぱっと咲いたかのよう。



なんだか、心が落ち着かない。