「あ……」
気がつくと、彼女に上半身を預けている状態で。
目の前には、俺を見つめる彼女の顔が。
その距離は、わずか10cmくらい。
「…………」
視線が合った瞬間、
足の痛みなんか忘れて、全ての神経が彼女に惹きつけられた。
揺らぎを持つ大きな瞳に吸い込まれそうになる。
兄を失って俺を憎み、でも、助けてと口にする。
撃ち抜かれそうな強さと、すぐ壊れてしまいそうなもろさ。
彼女の瞳の奥にある何かが、俺の心と直結して、電気のようなものが走った。
……って、待て。何だこれ。
完全に押し倒してる状態じゃん!
危なく胸、触るとこだったし!
それにしても、目大きいし肌白いし……すげぇ可愛い。二次元か!
思わず彼女に見とれてしまう。
無意識のうちに、ごくり、と喉が鳴る。
彼女は長いまつげを揺らし、二回まばたきをしてから。
弾力のありそうな唇をゆっくりと動かした。
「見すぎ」
「うわ! ご、ごめん!」
右足をこすらないよう、ソファーの背もたれに手をかけ体を起こした。
心臓がどきどきとうるさく鳴っている。
やば。顔赤くなってるかも。
慌ててリモコンに手を伸ばしたが、
さっきまで見ていたアニメが停止された状態でテレビに映し出され、さらに恥ずかしくなる。
チャンネルを押し、バラエティ番組を流しておいた。