きたない心をキミにあげる。




初めて会った時には、格好良くて優しくて仕事もできる、

素敵なお父さんができたと思い、嬉しかった。



本当のお父さんもいい人で好きだったけど、会社をリストラされて以来ダメな人になった。


お母さんが勢いのまま離婚してしまったくらいに。



男の人に好意を向けられることは嫌ではない。


むしろ、母子家庭で育った女の子はお父さんの影を追い求めて年上すぎる男の人に恋ができると聞いたこともある。



でも、今のお父さんは、何かが違った。



小学生の頃、近所の怪しいおじさんにいたずらされたことがあったからか。


父親という存在にそういう目で見られることが信じられないのか。



初めは特に何も感じなかった。


気がつくことができたのは、お兄ちゃんが真実を教えてくれたから。



確かに思い当たる節はいろいろあった。



お風呂上りに頻繁に鉢合わせること。


洗濯機に入れたはずの下着が、次の洗濯の時に干されていたこと。


クリーニングに出してと母にお願いした制服が、数日遅れて戻ってきたこと。


ふとした瞬間にスマホのシャッター音が聞こえた気がすること。



それらが偶然ではないことが分かってからは、

自分で自分を守るようにしたし、お兄ちゃんも全力で私を守ってくれた。



お父さんから向けられる視線が気持ち悪い。



いつ、何をされるかが分からなくて、怖い。