きたない心をキミにあげる。



痛々しい姿のそいつは、ほっと安心したような表情を浮かべている。



意味が分からない。


どうしてそんな穏やかな感情でいるの?


私はあの時あんたを殺そうとしたのに。



「ねぇ」


「へ?」



声をかけると、驚いたのか彼は間の抜けた声を発した。



「わざわざ来てくれたの? そんな状態で」


「うん。たぶんすごい探してると思ってたから。……やっと一人で外出れそうになって。遅くなってごめん」


「何であんたが謝ってんの? 私、あの時」


「だってこれ、弘樹の形見でしょ」



そうか。


こいつはお兄ちゃんがこれを買った時、一緒にいたんだ。


私の誕生日の前日に、お兄ちゃんは死んだ。



遺留品として戻ってきた袋の中に、私宛のバースデーカードと一緒に入っていたのが、これだった。