「…………」



悪いことしてるんだろうな、と思いつつ、

その唇にキスをした瞬間、心配は消えてしまった。



ふわりとした感触が、心臓と直結する。


涙が出そうになるほど、頭も、心も、体も幸せで満たされていく。



唇を離し、目を開けた瞬間、

きれいな水滴がついた長いまつげを揺らし、彼女はぷっと笑った。



「何? 今、お兄ちゃんに見せつけたの?」


「いーじゃん。別に」



俺がそう口をとがらせると、彼女もキスを返してくれた。



弘樹、俺は愛美が好きだ。


お前に生かしてもらった命で、彼女に恋をしてしまった。



「あはは。顔、真っ赤じゃん。照れすぎ。ウケるー」


「……るせーな」



また2人でここに来るよ。


もう自分から逃げるようなことはしない。もちろんお前からも。



きたない心と向き合いながら、俺は生きていくよ。



愛美を一生かけて守ろうと決めたから。