胸をドキドキさせながら長距離を走る電車に乗る。
格好つけて、バラでも持っていこうかと思ったが、
花屋の店員に「バラはお墓に供えないのが普通ですよ」と笑われてしまい、結局いつも通り黄色い菊を購入した。
ここに来るのは何度目だろうか。
供えられた花から察して、彼女もよく来ていたのだと思う。
偶然、はち合わせることはなかった。
でも、枯れた花を持ってきた新しい花と交換することで、彼女とつながっていた気がする。
等間隔に並び、俺を両脇から見つめてくる墓石の間を早足で進んだ。
花屋で時間をかけてしまったし、目の前でバスが行ってしまうという不運にも見舞われ、
待ち合わせの時間は過ぎていた。
「遅いー。いろんな意味で遅ーい」
すでに、彼女はあいつ――弘樹のお墓の前にいた。
「ご、ごめんっ」
1年ぶりの再会なのにやっぱり格好つかない自分。
腕組みをして、イライラした表情を浮かべられていた。
「あ……」
彼女――愛美はすっかり雰囲気が変わっていた。
常に高い位置で結わえられたポニーテールはなくなっていて、ウェーブがかかった肩くらいの茶髪へ。
服装も、ライダースジャケットに、ロングスカートっぽい太めのズボン(スカンツって言うんだっけ?)。
「何? 見すぎー」
頬をふくらませ、赤い唇をつきだしながら俺を見つめてくる。
そのぶっきらぼうな口調と表情は、前と一緒だった。

