しばらく車内に沈黙が走った。
車はスピードに乗って雨の光を反射する道路を進んでいたが。
「圭太くんは、胸の中がかーってなって全てを壊したくなる時とか、たまったどろどろした気持ちを爆発させたい時ってあるかな?」
ふと、隣の男がつぶやいた。
「まあ、あんまりないですけど。気持ちは分からなくはないです。でも俺はちゃんと自制します」
「そうか。僕はダメだと分かっていても止められない。結果、いろんな人を苦しめた。愛美ちゃんも僕の前からいなくなってしまった」
再びガラスに水滴が散らばり、埋め尽くされそうになった頃にワイパーで端へと追いやられる。
「モラルとか法律とかを守って発散すればいいだけでしょ?」
「はははっ、そうなんだけどね。僕は衝動を完全にコントロールできないまま大人になってしまったからね。頭では分かっているんだけどね。本当……悲しいよ」
車につきささるような雨の音、ワイパーが窓で揺れる音。
そして、消え入りそうなつぶやき声が車内に響く。

