しかし予想とは違い、車は普通に広い国道沿いを進んでいた。
俺たちが住んでいる町へと向かって。
まあ、助手席に座る俺は、ずっと緊張感しっぱなしだったけど。
「はははっ、そんな警戒しないでよ。ちゃんと家まで送るからさ」
「あ、はい。すみません」
いつの間にかあたりは暗くなっていた。
前後左右から赤や白の光が窓越しに突き刺さってくる。
「圭太くんは、どうして僕が逮捕されたこと知ってたの?」
ハンドルを握る彼は、なめらかな口調でそう言った。
視線は前方に向けられたまま。
暗いせいでその表情はよく見えない。
「ああいうニュースって一度は騒がれはするけど、すぐ新しいニュースや激しいニュースに取って代わられて、忘れられていくものじゃないか。現に僕の妻にだってバレていない。僕の名前をネットで検索したとしても、同姓同名の人たちがたくさんヒットするからね。どうして?」
「教えたくありません。ちょっとしたきっかけで知っただけです」
「そうか」
ぽつり、ぽつり、とフロントガラスにしずくが落ちてくる。
ワイパーがそれを一気に端っこに寄せた。

