「ただいまー」


「……おかえり」



仕事終わりのある日。


家に帰ると、落ち込んだ声のお父さんに迎えられた。



スーパーの袋から食材を出しながら、


「どしたの? 面接結果出た?」と尋ねてみる。



「不採用通知来た……。もう何社目だよ」


と言って、お父さんはワンカップのお酒のフタを開けた。



まさか面接落ちて、凹んで、また――



私は、ギロリとお父さんをにらみつけた。



すると、「いやいや、お金はある!」と慌てて財布を見せてくれた。



「よく頑張りました。遅くなったけど今からご飯作るねー。今日はハンバーグだよ。お肉安かったから食べて元気出しなよ」


「そうかぁ。ありがとう。……はぁ、愛美には苦労かけてばっかりだ」


「別にいいよ。たぶんお父さんが正社員になった頃には、メガネのオタクの王子様が迎えに来てくれるから」


「へい? なんだそれ?」


「それより、余ってる切手あったら1枚ちょうだい。履歴書用のやつあるでしょ?」


「ん? 引き出しの上あるから使っていいよ」




お父さんはお父さんなりに頑張ってる。それが嬉しかった。



あいつもあいつなりに頑張ってるのかな。