きたない心をキミにあげる。




そのまま駅へと向かい、電車に乗った。


平日の昼間の車内は、人の入れ替わりが激しい。



仕事中らしきサラリーマン、ぼんやりしている老人、若い男女。



私はどう映っているんだろう。


切ってウェーブをかけた茶髪に、濃い目のメイク。


下はロングスカートをはいているけど、上は七分丈のトップス。


両腕には、何もつけていない。つける気もない。


左の傷跡もほとんど消えたから、アクセサリーや時計で隠す必要もなくなった。



うとうとしていると、目的の駅に着いた。


駅前の花屋さんで、百合や菊、カーネーションなど、様々な色を束にしてもらう。



バスに乗って霊園前で降りた。


ほとんど人がいない道を進むと、無数にならんだお墓たちが見えてくる。


向かい合った墓石の間、芝生の上を進み、お兄ちゃんのお墓へと向かった。



「あれ?」



久しぶりに来たから枯れた花を回収しようと思ったけど、

供えられている花はまだ色が生きていた。



しかし、私がいつも飾っているカラフルなものではなく、黄色だけのやつ。



ちょ、菊だけって。センスないなぁ。


もっと色々あるでしょ。花屋にはだいたいお供え用セット売ってるくらいなのに。



心の中でそう思いつつも、ぷっと吹き出してしまった。



お父さんもお母さんもここにはほとんど来ないだろう。



考えられるのは、あいつだ。



ここに来たんだ。



お兄ちゃんに何か話しかけにきたのかな。