「はい、もう今週これ以上は無理だからね!」



そう言って、私は5000円札を財布から出した。



「すまん!」


「絶対増えないんだから、絶っ対につぎこんじゃだめだよ!」



強く言い聞かせると、お父さんはしゅんと下を向き、


「……情けないなぁ、俺って」


と言葉をこぼした。



狭い部屋の中、2人で朝食を囲む。



昔より白髪が増えたお父さん。


昔は仕事頑張っていたのに、会社にリストラされてからギャンブルにのめり込むようになった。



今は月いくらまで、という決めごとを頑張って守っているらしいけど、面接に落ちるたびにちょちょいとお金をすってきてしまう。



今は警備のバイトで食いつないでいる。


でも頑張って前みたいにもっと稼げるようになりたいとずっと言っていた。


だから、私がお父さんが立ち直るきっかけになろうと思った。



「今週これ以上使ったら、私、年齢ごまかして夜の仕事しちゃうよ」


「いや、それは絶対ダメだ! 俺が許さん!」


「あはは。だったら頑張ってー」



白ご飯にわかめの味噌汁、焼きシャケと漬物。


質素で簡単なものだけど、食べてくれる人がいるって嬉しい。



お父さんははしを置き、「愛美……すまんな。こんなダメな父さんで」と悲しそうにつぶやく。



「いーから。ほら、そろそろ行かないとハロワ混むよ」



私はあの家を出てから、高校を辞めて働くことにした。


今は、本当のお父さんの世話をしている。



本当のお父さんは、情けなくて弱いけどいい人だ。



一番好きなところは、私の前では『男』ではなく、

『父親』という存在でいてくれるところ。



今までもらってばかりで、頼ってばかりだった分、

ちゃんと与えられる人になりたい。