『お兄ちゃん? 怖い顔してどうしたの?』
いつものように部屋に来た愛美は、そう尋ねて僕を見つめた。
父と母が寝静まってから風呂に入ったらしく、Tシャツにショートパンツ姿で、髪の毛を湿らせたまま。
その無垢な表情、無防備な佇まいに、増え続けたドス黒い感情を覆っていた膜が破裂する。
衝動的に僕は愛美を床へ押し倒していた。
最初は抵抗してきたが、次第に体の力を緩め、
『お兄ちゃんにならいいよ。だって好きだから』と言い、瞳を閉じた。
僕は、愛美が好きで止められなかった、とそれっぽい言葉を囁いた。
妹だが血はつながっていない。
だからバレさえしなければ問題ないだろう。
彼女を抱いた時、初めて僕は父という存在から解放された気がした。
越えられた気がした。
それから親にバレないよう、半ば楽しむように恋人っぽい関係を続けた。
普段は愛美が僕の部屋に来ていたが、僕も彼女の部屋に時々行くようになった。
その方が、安心して愛美を抱けたから。
彼女の部屋に鍵をつけたのが好都合になった。

