きたない心をキミにあげる。



お互い無言のまま、並んだお墓の間を再び進んだ。



「何で泣いてるの?」


「……別に」


「あはは、隠せてないじゃん」



彼女の後ろを歩いていたはずだけど、なぜかバレていた。


目から次々と涙があふれだしているのが。



「愛美……後ろむいたままで聞いて」


「……何を」


「俺、さっき弘樹にきれいごとしか伝えられなかった」


「…………」


「愛美が好きで」


「うん」


「昨日もすげー抱きしめたくて、キスしたくて」


「ふーん」


「愛美を俺だけのものにしたくて」


「…………」


「俺だけの……っ。ものに、なってほしくて」



彼女の足が止まる。


俺も松葉杖を足元につける。



「早く弘樹のこと全部忘れて、俺のことだけ考えてほしくて」



本当は、ポニーテールもブレスレットも全部捨ててほしかった。


汚い心を持つ自分が憎くて、でも、それがまぎれもない自分自身だった。



「俺……弘樹が死んで良かったって心の底から思ってる」