きたない心をキミにあげる。



――いつの間にか、圭太といるのが楽しくなった。


――恋人みたいだなぁって不思議な感じしてた。


――でも、お兄ちゃんのことは忘れたくないんだよ。



きれいな涙が落ちる頬。


抱きしめたやわらかな温もり。


耳元に落とされた囁き。



「……っ!」



愛美が好きだ。


汚い心が震える。熱を持った鼓動が体に響く。



俺は松葉杖を後ろに放ち、手を伸ばした。


彼女の狭い肩幅に指をかけ、手前へと引っ張る。



痛みの残る右足を地面に落とし、踏ん張ってこらえた。



もたれかかってきた愛美の肩を押して引き、俺と同じ目線へと向かわせてから。


再び肩を寄せ、頬をくっつける。



俺はスマホを持つ右手を伸ばし、画面をタップした。



奥の木々や菜の花が揺れる音に、機械的なシャッター音を溶かした。



「……意味わかんない」



彼女の冷たい言葉を無視し、スマホに写ったはずの画像を確認する。


日の光のせいでよく見えないが、画面に広がっていたのは仏頂面の俺と驚いた顔の愛美だった。



彼女も眉間にしわをよせながら、画面をのぞき込む。



「なにこれ。私と一緒に死んでくれるってこと?」


「違う。死ぬときまで一緒にいようってこと」