アスファルトをそれて、砂利道を進む。
どこ行くんだろうと思いつつ、彼女についていく。
「わー。きれいー!」
左右の木々が開けた先にあったのは、一面に広がって揺れる黄色い風景だった。
季節は春の始まり。
日の光を浴び、色彩を増した菜の花畑。
その黄色の鮮やかさに目をくらませつつ、
「前に霊園のおじさんが教えてくれて。春になったら見に来ようって思ってたんだ」
と目を細めてまつ毛の影を涙袋に落とす、彼女の方に見とれてしまった。
わ~、と楽しそうに愛美は畑の中へと入っていく。
足元は柔らかい土だし、松葉杖だとバランスとるのが難しそうだ。
俺は、畑まわりの砂利道で待つことにした。
「これもお供えにしちゃダメかなぁ」
「ダメでしょ、勝手に抜いたら」
声だけで愛美と会話しながら、
これ全部集めたらどれくらいの油ができるんだろう、などと俺は考えていた。
小さなミツバチらしき虫と格闘していると。
「ねー圭太、写真撮ってよ」
と言って、愛美がぴょんと畑から出てきた。
俺はスマホを取り出し、黄色いじゅうたんを背景に愛美にピントを合わせる。
うーん、太陽の光が強くて、逆光になっちゃうな。
あ、ピントが愛美からずれた。
実物よりも可愛く撮ることができなさそう。