「えーと。これと、これと。あ、これもお願いします」



愛美は、花屋で名前のよく知らない花を選んでいた。


束ねられると、青や白や黄などの色とりどりの世界があふれ出す。


それを抱える彼女の姿は余計にまぶしかった。



バスに乗って霊園前で降りた。



すみきった青空の下で、

愛美は、ガラガラとトランクを片手で引き、俺は、すったんすったんと不規則なリズムで坂道を上った。



松葉杖をアスファルトに押し付け、左足を踏み蹴り前へと進む。


次第にパーカーの内側が暑くなってくる。



愛美は重い荷物を引き、花束を抱えたまま歩いていた。



「ごめん、荷物全部持たせちゃって」


「別に。私の荷物だし」


「や、重いよね。普通こういう時って男が持ってあげるもんじゃん」


「あはは。あんたの方が足痛くて大変でしょ? 何カッコつけようとしてんの? ウケるー」



ちっ、何だよ。


昨日あんなに可愛かった女の子はどこいった?



思わずその後姿をにらみつけていると、急に愛美は振り返った。



そして、


「圭太、ちょっと寄り道してこ」


と上目遣いの笑顔を見せ、俺のパーカーをつんと引っ張ってきた。



う、こういう仕草に俺が弱いの知っててやってるだろ。


本当にナマイキだ。こいつ。