高校2年生になったある日、
よくつるむようになった圭太という男子が僕に尋ねた。
『お前、いつもそんないい子でいて疲れない?』と。
その時は、圭太の方がいいヤツじゃん、と笑って受け流した。
それ以上のことは聞かれなかった。
圭太は自然と気を遣える性格だった。
だからこそ、これ以上入り込むなというサインを敏感に読み取ってくれた。
『あーあ。2組のあの女子、彼氏できたみたい。ちょっとヘコむー』
『あはは、圭太ならすぐいい彼女できるって』
『いやいやいや! 別に彼女とかじゃなくて見てるだけで十分だし。てか、こんな俺みたいなキモオタじゃ無理でしょ』
『そんなことないよ。圭太モテそうなのに』
『全然モテねーよ。お前に言われなくねーし。このモテ男が!』
圭太は、オタクオーラは出ているけど、見た目はそんなに悪くない。
頑張れば彼女くらいすぐできそうなのに。
たぶん踏み込む勇気がないだけだ。
他の友達にしつこく話しかけられて、僕が言葉をにごすと、
『くぅ~俺もそんなセリフ言ってみてぇ~』
などとオチをつけて会話を終わらせてくれる。
優しくて、純粋で、そして、臆病なヤツ。
ただ、一緒にいて居心地は良かった。
圭太になら僕の真実を知られても、離れていかないとさえ思い始めていた。
それほどに自分で抱えている汚い真実をどこかに吐き出さなければ、どうにかなってしまいそうだった。
そんな時だった。
再婚する、と父から伝えられたのは。

