きたない心をキミにあげる。



私は枕を手に取って、ぎゅっと抱きしめた。



「圭太ぁ」


「ん」



声をかけると、腕に顔を乗せたまま視線を私に向けてくれた。


ふわりとした黒い髪がメガネにかかっていて、触れて整えてあげたくなる。



「私はお兄ちゃんがいなくなった悲しさを圭太に埋めてもらった。家に帰りたくないから圭太と仲良くなって居場所を確保した」


「うん」


「でも、いつの間にか圭太といるのが楽しくなった」


「……俺も、愛美といるの楽しかったよ」


「恋人みたいだなぁって不思議な感じしてた。全然あんたみたいなのタイプじゃないのに。一緒にいるのが心地よくて、圭太をドキドキさせるのが面白くて、ドキドキさせてるのが分かると嬉しくて」



がさ、と畳がこすれる音がなる。


圭太は右足を伸ばし、軽く握った両手で額を押さえていた。



「もう分かんないよ。寂しかったから優しくされて圭太になついてただけなのかなぁ。でも圭太といるの楽しい。一緒にいたい。自分傷つけるのやめてって言ってくれたり、家に泊めてくれたり、ポッキー取ってくれたり、私を助けに来てくれたり、おっきいことからささいなことまで全部嬉しかった」



いつの間にか目尻から涙がこぼれていた。


心の汚い部分がぽろぽろと、はがれ落ちていくかのよう。



「こんな気持ちになるのおかしいよね……っ。だってそれまで私、あんなにお兄ちゃんのことが好きだったのに。本当、わけわかんないよぉ」