離れていった彼を横目に、私はぼふっと柔らかい布団に飛び込んだ。
体をきれいにして、ちゃんとトイレに行けて、美味しいご飯も食べることができて。
圭太が一緒にいて。
これ以上たまらないくらいに幸せだ。
今は、これで十分なのかもしれない。
「愛美、足、はだけすぎ」
布団の奥、畳の上で体育座りをしている圭太。
ちらっと私を見てそうつぶやいた。
「いーじゃん。くつろいでんだからー」
ごろんと布団の上を転がると、太ももが浴衣の隙間から出てしまう。
もちろん彼の顔は別のところにそらされた。
「制服もスカート短いし、私服も脚出しすぎだし、ちょっとは危機感持ったら?」
「へぇ。よく見てるんだねぇ、私のこと」
「いや! だから、その……。お父さんから自分の身を守るためにもさー」
「それならもう大丈夫だよ」
「え」
「私、あの家帰らないから」
部屋の隅においてあるトランクとリュックに、必要最低限の物は詰め込んできた。
圭太の家にもお世話になるつもりはない。
「どういう……」
「内緒」
「ちょっと教え……」
「やーだよー」
話し終える前に全部、言葉を止めてやった。
彼はいじけたように口を尖らせた。

