「あと、また切ったでしょ」
圭太は、一回まばたきをしてから、私に鋭い視線を向けてきた。
「え、えっと」
お風呂上りの浴衣姿。右にはブレスレットはつけている。
左を隠すものは何もなかった。
圭太にぐいっと手首をつかまれる。新しい傷があらわになる。
げ、バレた。
圭太は目を細め、切なげな顔になった。
視線は、ピンク色になった跡の上に刻まれた、赤い線へ。
「離してよ」
こんな意味のない傷をつけた自分が恥ずかしくなる。
しかし、なぜか彼は私の手首に顔を近づけてきた。
赤い傷に唇が寄せられる。
え!? まさか……
こいつ、ここにチューしようとしてる?
「ちょ、何!?」
「ご、ごめん! つい……」
急いで腕を振り払うと、顔を真っ赤に染めた彼の顔が目の前にあった。
私まで赤くなってしまいそうだ。
ここにされるくらいなら、思いっきり唇にキスしてほしいのに。
「意味わかんない。そんなことしたら私、圭太の右足なめるよ」
「は!? 絶対ダメ!」
「これこそ傷のなめ合い、みたいな?」
「ダメ! すげー痛いから今!」
「さっき痛くないって言ったじゃん」
「無理! まじでダメ!」
本気で嫌がっているっぽい。
座ったまま後ろに逃げられてしまった。ちぇ。

