「愛美」
「なに?」
「やっぱ、ごめん……」
消え入りそうな声が耳元に落とされる。
肩を押され、体が離されてしまった。
なんだよ、ぎゅっとしてきたのはそっちからじゃん。
ヘタレなのか、それとも、この前と同じで私を拒絶しようとしているのか。
寂しい気持ち、不安な気持ちが心に生じていく。
無理やりにでも圭太の気持ちをこっちに向かせたくなってしまう。
だけど――
「俺、あいつ――弘樹に言わなきゃいけないことあるから」
メガネ越しの瞳に、何かの覚悟を決めたような強い意志を感じた。
「そっか」
抱きしめてもらいたい。抱きしめてあげたい。
その想いはあふれ出してくるけど、今は止めなきゃいけないらしい。

