きたない心をキミにあげる。



圭太には、家であったことを簡単に話しておいた。



「俺こそ、もっと早く行けたらよかったね。ごめん」



ぷるぷると首を振る。


揺れるポニーテールが何かに触れた。



それが圭太の手だったことに気づいた瞬間、ぎゅっと背中が彼の腕に包まれた。



私も彼の右足から手を離し、その体に近づく。


圭太とくっつくことができて、安心した。


もう離れたくないと思うと同時に、私自身がもっと強くならなきゃと思った。



でも幸せだ。


心が、体がはち切れそうなほど。



今日だけは、思いっきり好きでいていいよね?



「俺、愛美にひどいこと言った」


「ううん」


「もう口きいてくれないかと思った」


「なにそれ。助けに来てくれたじゃん」


「だって、会いたかったから」


「私も会いたかったよ」



優しく、でも、どこかためらいがちに私の背中をなぞるその手が愛おしい。


弱々しい口調で女々しい言葉をつぶやかれるのも嫌いじゃない。


むしろ、好きだ。


私が抱きしめたくなった。



いったんその腕から離れ、圭太の肩の後ろに腕を回した。


ぎゅっと彼の体を包み、首筋に顔をうずめる。


彼もまた、私の背中に腕を回してくれた。


どくんどくん、とお互いの早い心臓音が混ざり合っていく。


このまま圭太のものになりたくてたまらない。