空いている旅館を見つけたのは、夜7時すぎ。
兄妹で親の墓参りにきましたと言ったら、すんなりチェックインすることができた。
レストランでご飯を食べてから、温泉に入った。
「はぁ~。気持ちよかった~」
髪の毛を乾かし、いつも通りポニーテールを作ってから部屋に戻ると、布団が2組しかれていた。
浴衣姿の圭太は、布団の上に座り足首をゆっくり回している。
そこへ近づき、私もぼふっと布団に座った。
「………」
珍しく彼はメガネ越しに私をじっと見つめている。
浴衣似合ってる、とか思ってくれていたら嬉しい。
「ねぇ、ここ大丈夫?」
「うわっ、触んないでよ!」
「痛い?」
「や、だいぶ腫れは引いたから」
「じゃあいいでしょ?」
「つっ……」
少し不自然なふくらみを帯びた彼の右足。
形を確かめるようにゆっくりと撫でる。
ちらっと彼を見上げると、やっぱり顔を真っ赤にしている。
その様子を見ると、私まで胸がどきどきしてきた。
「本当あんたってバカだよね。何で悪化させてんの?」
「や、たまたまだって」
「ごめんね。でも、ありがとう。圭太が来なかったら、私……」
それ以上は言葉が詰まってしまい、腫れた右足を優しくなぞることしかできなかった。

