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「ねぇ、メガネのオタクの王子様ぁ」
「は?」
「お風呂、入りたい」
「え。どこで?」
「あのあたり結構よさげな温泉旅館あるんだよ。山登りの人たち向けにとか」
そう伝え彼を見つめると、やっぱり視線がそらされた。
部屋にこもっていたせいで髪の毛がかゆくなってきた。
今の状態だと、圭太にあまり触れられない。
「俺、あんまりお金ないんだけど」
「私あるよ。バイト代たまってる」
「でも」
「いーじゃん。この時間だと到着したら真っ暗だよ」
「そういうことじゃなくて」
「だって私って寂しいから圭太と一緒にいるだけなんでしょ? だったら2人で泊まってもやましいことはないんじゃない?」
「……その、あれは本当にごめん」
気まずそうな声が隣から聞こえてくる。
薄暗くなる空の下で、電車は目的地近くの駅に到着した。
右足を重そうにして歩く圭太と一緒に電車を降りた。

