きたない心をキミにあげる。



1時間くらいお父さんは粘っていたが、諦めたらしい。


遠のいていく足音と同時にほっと安心のため息をついた。



ぐー、と数時間おきに腹の音が鳴ってしまう。



おなか……空いた。何か食べ物なかったっけ?



「あ!」



そういえば。圭太にこの前ポッキー取ってもらった。


あれ、楽しかったなぁ。すっごい真剣に狙って落としてくれたし。



特大ボックスだからしばらくはこれで食いつなげそうだ。



口にすると、チョコレートの甘さが、頬に溶け込んでいった。


同時に喉の奥がつんと痛みだす。



「会いたいよ、圭太ぁ……」



はぁ、昨日から泣いてばかりだ。


脱出する元気すらなくなってしまった。



温もりや優しさを与えられないと、すぐ不安になる弱い自分。


逆に与えられるとすぐにすがってしまう。



優しくしてくれたお兄ちゃんはもういない。


圭太も私から離れてしまった。



欲しがりでワガママな私。このままじゃダメかもしれない。



いや、うすうすと分かってはいた。


今のままでは何も変わらないことを――。





その時、インターホンの音がドア越しに響いた。


ドアに耳を当てると、お父さんの声にもそもそした声が重なって聞こえてきた。



松葉杖をつくような音が床を伝って響いてくる。



もしかして圭太? まさかここまで来てくれた?



嬉しさのあまり、急いで涙をふいた。



圭太、ごめんね。


何度も何度も甘えてしまったけど、最後にもう一度だけすがってもいい?



だって、このチャンスを逃してはいけない。



私は大きく息を吸って、気持ちを入れ替えた。



「よし!」



急いで部屋の中のものをリュックに詰め込んだ。


服や下着を詰めるとすぐにいっぱいになったから、クローゼットからトランクも出した。



足音を立てて、私がここにいることをアピールした。



私に気付いて。お願い。



そう願いながら。