きたない心をキミにあげる。




部屋に閉じこもったまま、朝を迎えた。


トイレ、行きたい。でも1階にはお父さんがいる。時々この部屋の近くまで様子をうかがいに来る。



お母さん、いつ帰ってくるのかな。


お父さんが仕事に行く月曜まで待たなきゃいけないのかな。


あと2日も、ある。


仕事を休まれでもしたら、どうしよう。



不安な気持ちが次から次へと押し寄せてくる。



その時、がちゃがちゃと数字ボタンを押す音がドア越しに聞こえた。



「ひっ!」



恐怖のあまり、思わずベッドをきしませてしまう。



「お、愛美ちゃん、起きてる?」



びっくりした。音を立てずに階段上って来ないでよ。



「そろそろ出てきてくれないかなぁ。ご飯買ってきたから一緒に食べようよ」



気持ち悪いほどに優しい声。絶対に出てやるものか。



「いらない」



そうつぶやいても、がちゃがちゃと鍵をいじる音は止まなかった。



0~9までの4桁の番号。


何通りある? 普通に1万通りか?


いや押す順番は関係ないから、もっと少ない?


確か鍵の説明書には5000通りくらいって書いていたっけ。



まだ当てられないよね……。



鍵が震える音が続き、昨日押し倒された時の恐怖を思い出してしまう。



もう嫌だ。こんなの。いつまで続くの?