きたない心をキミにあげる。




私は光る金色を左手でぎゅっと握りしめた。



でもどうして?



圭太への気持ちはどんどん大きくなるのに。


このブレスレットはいつまでも外すことができない。


髪型も、一度は圭太の前で降ろしたけれど、結局はポニーテールのまま。



圭太に会いたい。


そう思うものの、心のどこかにはずっとお兄ちゃんがいる。



お兄ちゃんが私を守ってくれていたことは事実。


現に彼のいない今、お父さんは私をやりたい放題にできる。



お兄ちゃんはきっと苦しんでいた。その中でも私を安心させてくれた。


私はお兄ちゃんに確かに恋をしていた。



その幸せだった日々を私が忘れてしまったら、

たった17年間しか存在できなかったお兄ちゃんの命を、意思を、

一体、誰が確かなものにしてくれるのだろう。



『愛美は弘樹のことが好きなんじゃなかったの?』



そうだったよ。


でも今は圭太のことが好きだよ。


その上でお兄ちゃんを好きだったことは忘れたくない。



「あはは、欲張りだなぁ、私って」



情けない声でひとりごとを吐き出してしまった。