そういえば、
手首を切り始めたのは、圭太の首を絞めた後だったっけ。
初めはお兄ちゃんがいなくなった悲しさを、
生き残った方の男の子――圭太への憎しみに変えることで何とかやりすごしていた。
それが間違いだったことに気がついてから、
どうしようもできない悲しい感情を自分へと向けた。
物理的な傷の痛みは、心の痛みを少しだけ軽くしてくれた。
血が固まったのを確認し、左の袖を下ろしてから。
私は切っていない方の袖をまくった。
揺れながら光るのは、お兄ちゃんの形見――ブレスレット。
金色と色とりどりのまぶしさは、手にした時から変わっていない。
対して、お兄ちゃんへの想いはめまぐるしく変化している。
他に何も見えなくなるくらいに大好きだった。
死んでしまって辛くて悲しくて仕方がなかった。圭太を恨んでしまったほど。
だけど、次第にお兄ちゃんのことが分からなくなった。
部屋の中に傷や穴を見つけたとき。
パソコンに残されていたURLを見つけたとき。
そして、ネットでその内容を確認したとき。
私はそれらから逃げるように圭太にすがってしまった。
気がつくと彼に惹かれていた。
あんなにお兄ちゃんのことが好きだったのに。
お兄ちゃんのところに行きたいとさえ思っていたのに。
圭太の言う通り、
私はやっぱり優しくされたら誰にでもなついてしまうのだろうか。

