「返してよ……お兄ちゃんを返してよ……」



女の子は俺を殺そうとしながらも、ボロボロに泣いていた。



その時、騒ぎを聞きつけたらしい誰かの足音が近づいてきた。


俺が激しい咳と呼吸を繰り返している間に、彼女はベッドから降り、部屋を飛び出していった。



「水越さん、どうかされましたか?」


「いや……ほかの患者さんが部屋を間違えたみたいで」



俺は駆け付けてきた看護師にそう伝えていた。


なぜかは分からない。



たぶん、部屋に明かりがつけられて、くらんだ視界の中、

俺の枕元に、キラリと金色に光る何かが見えたから。



それは、あの日――事故に遭った日、

弘樹が買っていたブレスレットだった。