きたない心をキミにあげる。



「……お願いです。ちょっと愛美さんと2人で話させてください」


「いい加減にしてくれるかな。迷惑だよ」


「いいんですか? 昔も逮捕されたことあるんですよね? 義理の娘を監禁めいたことしてること、然るべき機関に連絡したらやばいんじゃないですか?」


「……何を言ってるんだ? 訳が分からないよ」


「お願いします! 少し話したらすぐ出ていきますから! 通報もしませんから!」



言っていることが支離滅裂だ。格好悪すぎる……。


だけど、愛美がすぐ近くにいる。俺に助けを求めている。



どうにかして、彼女をここから出してあげたかった。



その時、ブー、ブー、とスマホの振動音がした。



俺のではない。愛美の父親からだった。


彼はスマホを取り出し、画面を見つめる。



「出なくていいんですか? ずっと鳴ってますよ」


「ちっ。電話終わるまでだからな」



愛美の父は、「どうだ? お義母さんの様子は?」とトーンを変えた声で言いながら、1階へと下っていった。


愛美の母親からの電話だろうか。



俺は、ほっ、と胸をなでおろしてから。



「愛美、開けて」


と鍵のついたドアに向かって言った。



すると、「私の誕生日」という、か細い声が返ってきた。



「え? そんな分かりやすい……」


「だとすぐバレそうだから、その前日にしてある」



愛美の誕生日の前日。それは忘れもしない、あの日だ。


俺は4つの番号を押した。



ボタン下のつまみをひねると、ガチャ、と鍵が開いた。