松葉杖の先にカバーを着け、リビングへ入った。
おかしい。前に来た時と、部屋の様子が違う。
以前は、ほこり1つなさそうな綺麗な空間だったのに。
今では食卓の上に空になったカップラーメンのうつわや、惣菜のケースが並べられたまま。
組み合わせソファーもばらけた状態で、クッションが床に落ちている。
ローテーブルも敷かれたラグと少しずれた方向に置かれていた。
とりあえず、今、愛美の母親はここにいないことが分かった。
「早めにお願いね。仕事したいから」
「はい、ありがとうございます」
リビングの隅にある棚の上。ここは前来た時と同じ。
小さな仏壇の前に、弘樹の遺影が置かれていた。
控えめに微笑む弘樹に向かって両手を合わせる。
弘樹、今は簡単にでごめん。お墓にいったらちゃんと話すよ。
そう彼に心の中で伝えると、
天井がみしり、と鳴った気がした。
やっぱり、愛美はここにいる?

