きたない心をキミにあげる。








骨折して治りかけた足を捻挫。


治療の他、念のための検査も受けたせいで、病院に1泊するハメになった。


せっかく両足で歩く訓練を始めたのに、再び2本の松葉杖に頼る生活に戻った。



「あのぅ。愛美さん、いますか?」


「出かけてるよ」


「そうですか……」


「愛美ちゃんに何の用?」



愛美が俺の家から出て行ってからおよそ1日。


ラインを送っても既読がつかないし、もちろん返事も来ない。



家にいったん帰ってから、愛美、そして弘樹の家を訪ねた。


すると、出てきたのは彼女の父親だったため、俺はビビっていた。



「や、その、えっと」


「これ以上、愛美ちゃんに会うのはやめてくれるかな?」



優しげな口調ながらも、はっきりとそう言われてしまった。



愛美の父に会ったのは、駅前での騒ぎ以来だ。


きっと、俺のことをよく思っていないだろう。


弘樹が死んだ日、一緒にいたのも俺だったし。



線香をあげに行った時に『圭太くんが謝ることなんてないんだよ』と口にしていたけど、

それはただの社交辞令だったのかもしれない。



開けられたドアの先をちらりと見る。


玄関には父親のものらしき革靴しか置かれていない。


本当に愛美は出かけているのだろうか。だとしたらどこへ。



本当のお父さんのところ、だったらいいけど。



「こんなこと言うのは申し訳ないけど、愛美ちゃんも圭太くんにもう会いたくないって言ってるから」


「え……」


「圭太くんといると、弘樹が死んだことを思い出してしまう、って泣いてたんだよ」