左足と両手を使い、自分の力だけで車から降りた。
早くこの痛みを止めなければ、俺は何もすることができない。
「ま、同じこと13年前に言われてたら、あんたのことぶん殴って張っ倒してたかもしれないけどね」
母に手を引かれる。
口調とは異なり、その手はあたたかかった。
左足だけで地面を蹴り、病院の夜間入口へと向かった。
気持ちはまだごちゃごちゃしていた。
あらゆることを深く考えることができなかった。
ただ、幼い頃に抱えて閉じ込めていたはずの感情の正体が、
ほんの少しだけ分かった気がした。
『別にいい子じゃないよ。圭太の方がいいヤツじゃん』
『本当、優しすぎてムカつく』
俺はいいヤツでも優しすぎるヤツでもない。
汚ない心をずっと隠し持っていただけ。
そのことを知りたくなくて、人の深い部分まで入り込むことができなかった。
現実よりも、二次元の世界にどっぷりハマっていた。
弘樹……ごめん。
お前が最後、俺だけに秘密を打ち明けてくれたのは、嬉しかったんだよ。
だけど――

