母がエンジンを切っても、俺は体を動かすことができなかった。
「ほら、圭太。行くよ」
「こんなんで……本当にごめん」
「動けない? そっち行くから待ってて」
「こんな汚い心を持った息子で、ごめんなさい」
そう口にした瞬間、母は車から出てドアを勢いよく閉めた。
うなだれたまま何もできないでいると、俺の方のドアが開けられた。
「うるさいな! そういうことは後にして!」
母の怒り声とともに、腕が引っ張られる。
「だって……俺、父さんが死んで良か……」
「あーーー! うるさい! あんたがどう思ってようが、母さんは圭太のおかげでここまで生きてこれたの! 圭太がいるから仕事頑張れるし、父さんがいなくてもしっかり生きていかなきゃって思えたの。さっきからごちゃごちゃ言ってるけど、結果今ちゃんと2人で生きてるんだからいいでしょ!?」
引っ張られた腕が外れ、空を切る音が鳴る。
やべ、殴られる、と思い目をつぶったが。
「わーー母さんまた殴るとこだった。あんた足痛いのに!」
「……俺全然動けない時に1回殴ったじゃん」
「あ、そうだった。……ほら、行くよ!」

