「くそっ……つっ」
必死で足を動かそうとしても、よろよろと右足を引きずったまま。
思う通りに前に進むことができない。
早く、愛美を追いかけなければ。
きっと、彼女はこれを送って、俺に何かを伝えたかったのだ。
『寂しいから俺に近づいてるだけでしょ? それとも優しくされたら誰にでもなつくの?』
どうして俺はあんなに冷たい言葉を吐いてしまったのだろう。
本当は一緒に暮らしているみたいで、ドキドキして毎日が幸せだった。
髪の毛をおろした愛美の姿が、可愛らしくて。
常に結わえられていたその髪型を辞めさせた瞬間、初めて俺は弘樹を超えられたかと思った。
本当は愛美に、キス、したかった。抱きしめたかった。
だけど、どうしてもできなかった。
自分の奥底に閉じ込めていたはずの、汚い心によって。
弘樹に嫉妬して、愛美にあたってしまった自分が、たまらなく悔しい。
今日は家に母親はいるのだろうか。
愛美は大丈夫だろうか。
逮捕歴もある父親によっていたずらされているのではないだろうか。
一気に不安な気持ちが押し寄せる。
松葉杖は家に置いてきてしまった。
必死になって右足を軽く降ろしてから、左足でアスファルトを踏み蹴る。
しかし――
「わっ!!」
バランスを崩した俺は右足に体重をかけたまま、下へ一直線に倒れ込んだ。

