「ううん。圭太って顔面は悪くないよ。確かにメガネないと目はつぶらな感じになるけど」
「うるせーな。返して。……見えないから」
「どんくらい悪いの? この距離で見えない?」
「うん。全然ぼやけてる」
「じゃあ……これなら見える?」
ぎゅっ、とソファーの音を鳴らし、私は圭太に近づいた。
その距離、およそ10センチメートル。
どき、どき、と鼓動はさらに早まっている。
きっと圭太もドキドキしてくれているかな。
「……見えた」
「うん」
「可愛い」
彼の心がそのまま言葉になったような、自然なトーン。
近い距離で、じっと見つめられる。
まるで心を捕らえられているかのよう。
初めて見たかもしれない。彼の男の子っぽい顔を。
嬉しくて、でも恥ずかしくて、ドキドキが止まらない。
「こっちの方が似合ってる」
「あ……」
圭太は手を伸ばし、髪の毛をとかしてくれた。
きつくしばっていた結い目のくせを整えてくれている。
すっと指が通される感触が気持ちよくて。
このまま圭太のものになりたくて。
右手で彼の手をぎゅっと握った。
ちらりと彼はその手を見てから、私に視線を戻す。
私は、圭太の瞳に自分の姿が映っていることを確認し、目を閉じた。
このまま時間が止まってしまえばいいのにと思いながら。

