最初は憎んでしまったけど、
お兄ちゃんが助けたこいつが、私が唯一心を許せる場所になった。
家に呼んでくれたり、お父さんから私を守ろうとしてくれたり、勉強を教えてくれたり。
テンパったり、照れたり、笑ったり、優しくしてくれたり。
きっとお兄ちゃんの事故のことがあるから、私を助けてくれる。
いつの間にか、それだけじゃ物足りなくなった。
1人の男の子、水越圭太として、私のことを見てほしい。
そして、圭太のことをもっとドキドキさせたかった。
だから、「じゃあ、そのポニーテール、取ってくれる?」という、彼の真剣な声を素直に受け入れた。
「……うん。いいよ」
後頭部に手を回し、飾り付きのゴムを引っ張る。
人前で髪の毛をおろすのは、半年ぶりくらいか。
ねじれたゴムをほどき、しばった髪を一気に解放する。
くせのついただろう髪の毛が、ふわりと頬や首筋に落ちてきた。
圭太は表情を失ったまま、私を見つめている。
その視線を浴びていると、急に恥ずかしくなってしまった。
「み、見すぎだから!」
やばい、私が顔赤くなってるかも。
急いで彼のメガネをひょいと抜き、取り上げた。
「ちょっと、返してよ」
「や、だって、人前でおろすの久々すぎて恥ずかしい。てか、なんで圭太はメガネなの? コンタクトにしないの?」
「俺、顔に特徴ないからメガネないとまじで存在感なくなるの! だから返してよー」
その言葉に笑ってしまう。
メガネキャラなのは、彼のある種のこだわりだったらしい。
頬を染めて、いじけた表情をする彼にきゅんとした。

