きたない心をキミにあげる。




次の日は終業式のため、午前中で学校が終わった。


友達と昼ごはんを食べてから電車に乗り、まっすぐ圭太の家に向かった。



到着したのは夕方5時頃。


こんな早い時間に来るのは、お母さんに泥棒猫と言われた日以外、初めてだった。



「おじゃましまーす。って、今度はゲームっすか」


「いーじゃん。俺、春休みだし」



リビングに入ると、テレビにはゲーム画面が映し出され、

テーブルにはコントローラーが置かれていた。



セーブするから待ってて、と言われ、彼の隣に座り、やたらリアルなゲーム画面を眺めた。


やりたいとこまで進めていいよ、と伝えると、ごめんね、と言って彼はコントローラーを操作し続けた。


しばらく彼の隣でゲームを眺めつつ、スマホをいじる。



圭太は時々ちらっと私を見ては、再び画面に集中した。


別に気を遣わなくていいのに。



こうやって、だらだらと一緒に時間を過ごすのも、たまにはいいかもしれない。



「そういえば。圭太は春休み予定ないの?」


「今度友達とゲーム合宿するよ。合宿って言っても友達の家でオールでゲームするだけだけど」


「へぇー。ねーねー今度私ともどっか行こうよ」


「え。別にいいけど。行きたいとこある?」



「うん。お兄ちゃんのお墓」



そう伝えると、圭太はコントローラーを手放し、私を見る。



「足、だいぶ良くなったでしょ。そろそろ行けそうじゃない?」


「あ、そうだね……」



なぜか圭太は言葉をにごした。



前はお兄ちゃんに言いたいこといっぱいあるから行きたい、って言っていたのに。


何かがおかしい。



唇を噛みしめ、気まずそうな表情を浮かべている。



そのまま、彼はゲームを止め、テレビを消した。


急に部屋の中が重たい空気に包まれた。