きたない心をキミにあげる。




「ねーねー。これはー?」



愛美が見つけたのは、特大のポッキーの箱。


ありがたいことに、前にやった人が少しずらしてくれている。



「何回かやればいけるかも」



俺はそう答え、500円玉を投入した。


箱型のものを落とすのは得意だ。


予想通り、1プレイ残したままで落とすことができた。



おめでとうございまーす! と店員さんがガランガランとハンドベルを鳴らしてくれた。



「すごーい! 圭太やるじゃん! 嬉しい~!」



愛美はテンション高く、俺の手を握ってきた。


どきっとするヒマもなく、手がぶんぶんと上下に振られる。



その勢いで彼女のパーカーの袖が落ち、左手首がちらっと見えた。



赤色の線は薄くなっている。


新しい傷跡はなかった。



ほっとして思わず、彼女の手を握り返してしまった。



あたたかい手のひらの温度が、愛おしく思えた。



愛美は、俺をじーっと見つめてから、


「あはは。こうしてると恋人同士みたいだね」


と言ってゆっくり手を離し、取り出し口から景品を拾った。