きたない心をキミにあげる。




「ねぇ、お兄ちゃんって学校でどんな感じだったの?」


「聞き上手ないいヤツで、宿題や委員会とかも真面目にやってた。……あ、あと女子にかなりモテてたよ」



運ばれてきた食事をチラ見しながら、愛美に伝える。


彼女は「へぇ~」と面白くなさそうに言った後、スプーン上のドリアをふーふーした。



「でもあいつ、告られても全部断ってた」



そう付け加えても、愛美の表情は変わらなかった。


無表情のままスプーンを口にしている。



好きだった人のモテ話は面白くないのかと思い、

「家では、どうだったの?」と話題を変えた。



「たぶん、学校にいるときと同じ、だと思う。勉強教えてくれて、グチとかも普通に聞いてくれて、お母さんの手伝いちゃんとして、部屋もいつも綺麗で……」



ここで言葉が途切れた。


愛美はスプーンを食器に落とし、黙り込んでしまった。



いつもより赤色に染まった唇を閉じ、眉間に軽くしわを寄せる。



がやがやとしたファミレス内で、俺たちの間だけ沈黙が走っている。



弘樹の話題は、ここではしない方がいいのかもしれない。