結局早退することになり、タクシーで家に向かった。
あの事故以来、よくタクシーにお世話になってるな。
なぜか愛美とも何度か乗った。
まあ年末のコミケ行けなかったし、おこずかいは余っている。まあいっか。
「ただいま」
誰もいない家に帰ってきた。
部屋着に着替え、ソファーに腰をかける。
録画した深夜アニメを見ようとリモコンに手を伸ばした。
これが俺の日常。
愛美との日々は夢だったんだ。
そう思わないと彼女への想いが止められなかった。
なぁ……これでいいんだよな。弘樹。
しかし、いくら画面の中でストーリーが動いても、女の子がわいわいしてても集中できない。
違うことが頭の中を支配している。
愛美、最近は大丈夫なんだろうか。
『何してるの?』
ラインを立ち上げ、とりあえず文字を打ってみた。
「ん~~~」
どうしても『送信』をタップすることができない。
いつもは愛美から連絡が来ていたから。
何してるんだろう俺。
普通に連絡すればいいのに。
いや。だめだ。
必死で自分の想いを押さえつける。
薄暗くなる部屋の中で1人頭を抱える。
いいから違うことを考えろ。アニメを見ろよ俺。
でも、彼女とつながっていたい。

