きたない心をキミにあげる。




授業中、ぎゅっと目をつぶる。


さっき弘樹の話をしたからか、すぐにあの日が思い出された。



『圭太!』



近づいてくる車のエンジン音とともに、俺に放たれた弘樹の手。


宙へ跳ね飛ばされた彼の体。



そこで映像は途切れた。



弘樹……お前はどうしてあの時、俺を助けたんだ?


どうして悲しそうに微笑んだんだ?


もしかして、お前は何かに苦しんでいたのか?


どうしてもっと俺らに心を開いてくれなかったんだ?



でも、最後に、

どうしてプレゼントをあげる相手を俺に話してくれた?



どうして愛美を残して死んでしまったんだ?



俺は今、どうして愛美のことばかり考えてしまうんだ?


愛美をどうしたいんだ?



「水越、大丈夫か? すごい汗だぞ」


「あ……」



先生の声によりはっと我に返る。


俺は浅い呼吸を繰り返し、こめかみに汗をにじませていた。


ぽたりとノートに一粒、落ちた。



「すみません、ちょっと足の調子が悪くて」



そう先生に伝え、松葉杖片手に保健室へと向かった。