現場系男子にご用心！？【長編改訂版】

岡田さんはゆっくりと頭を上げる。
少し潤んだ瞳で私を見つめ、話を続けた。

「……それで、こんなときに言うのもなんだけど、正直に言うよ。結婚をしたい気持ちは変わらないし、タイに行くときは、一緒に付いて来て欲しいと思っている。……答えはすぐに出ないのは、じゅうぶん承知の上でのことだけど」

「……うん」

「まだ何か月も先のことだから、ゆっくり考えて欲しいんだ。そのときに里緒奈がどんな答えを出しても、俺はそれを全部受け入れるつもり。……出来れば、俺の望んだ、いい答えが欲しいとは思っているけど」

そう言うと岡田さんはまた煙草に火を付け、ベランダへと出て行った。


結婚をして、岡田さんに付いていく。
知り合いのいない異国の地で、岡田さんを支える。

私がそれを出来るんだろうか。
英語だって碌に出来ないのに、生活なんて出来るんだろうか。

でももしかしたらこの手じゃ、もう今まで通りの仕事が出来ないかもしれない。
そう考えたら、会社にいるより岡田さんについていく方がいいのかもしれない。

だけど、工場を辞めたくないんだ。
どうしても諦めがつかないんだ。

あの場所が好きで、あの仕事が好きだから。


でも、岡田さんのことも好きで、傍にいたいんだ。


……どうすればいい？
どうするのが一番？

私にとってどれが一番最良の答えなの？


そのうちに頭がぼんやりとしていく。
痛み止めの薬が回ってきたのか、だんだんと瞼が重くなり、頭の中は真っ白になっていった。