「ゴメン、それは俺のエゴだよ。何年間も遠距離でそう簡単に連絡も取れなくなる、そんな中で、里緒奈の気持ちが変わってしまったらと思ったら不安で苦しくて、海外に出向するかもしれないなんて言えなかったんだ。それだったら早くに結婚して繋ぎ止めておけばいい、そう思ってしまったんだ」
岡田さんは切なそうに笑った。
その笑みにギュッと胸が締め付けられる。
岡田さんの自分勝手な思い。
真実を隠したまま、先に進もうとしていた。
本当は怒ってもいいはずなのに、なぜか怒るどころかそこまで思っていてくれたことが凄く嬉しくて、そして岡田さんの本心を知ることが出来て、不思議と気持ちが穏やかになっていく。
「もっと早くに言ってくれたら、こんなに悩まなくても済んだのに……。ずっと苦しかったんだよ。なにかを隠しているのは気付いてたけど、それを言わずに誤魔化すから」
「……ごめん、それは謝る。だからこんな怪我をしてしまったんだよな。俺のせいだよ、全部」
「ううん、違う。この怪我はあくまでも私のせいなの。岡田さんはなにも悪くない。……でも、言わないままで話が進んでいたら、どうなっていたのか、自分でも分かってる?」
きっと結婚が決まったあとで、その事実を言われていたら、私は岡田さんのことを嫌いになってしまっていたかもしれない。
もっともっと、苦しい思いをしたかもしれないんだ。
岡田さんは今にも泣きそうに、顔を歪めた。
そして、私に深く頭を下げた。
「……そうだね。軽率な行動をしてしまって、申し訳ないと思ってる」
「そんな、頭を下げなくてもいいよ。分かってくれたならそれでいいし、真実を知れたからいいんだ」

