「さ、座って。おかわりはいくらでもあるから、気兼ねなく言って」

「……いただきます」

申し訳なく思いながら、そう言って食べ始める。
岡田さんも私が口を付けたのを確認してから、「いただきます」と言って食べ始めた。

見た目も良ければ、味も抜群。

いつもは飲んだ日の朝はあまり食べられないはずなのに、あっさりとした味付けに不思議と食べられてしまう。


食べながら、ついつい考える。

この人には弱点はないのか。

顔良し、性格良し、それに加えて家事も出来る。
なんでもござれの高スペック男じゃないか。


そんな人が、なぜこんなズボラな女を好きに?



……あ、そこが弱点か。

って、それじゃ私がダメ女って言っているようなもんじゃん。
ああ、本当に私って……。


「口に合わなかった?」

不安そうな表情を浮かべて話す岡田さんに気がついて、ハッと我に返った。
どうやら考えごとをしていて、私の表情が曇っていたのを、不味いと勘違いしてしまったようだ。

「あ、ごめんなさい。ちょっと考えごとしてて。料理は美味しい!とても!」

「そう。ならいいんだけど」

慌てて否定をすると、岡田さんはホッとしたようで、また食事を摂り始めた。

……危ない。
せっかく美味しいのに、勘違いで落ち込まれちゃ可哀想だもの。

変なことを考えるのはよそう。
今は食べることに集中だ。

結局おかわりまでして、たらふく食べてしまった。


食事を終えると、岡田さんは私の分のお皿まで重ねてシンクまで持っていき、代わりにコーヒーの注がれたカップを手に戻ってきた。

香ばしい匂いが、辺り一面に充満する。

食事のあとのコーヒーはたまらないんだよね。さすがよく分かってらっしゃる。
いやしかし、なにからなにまでやってもらって申し訳ない気分だ。

「里緒奈も吸う?」

テーブルの上に灰皿を置くと、私の前に煙草を差し出した。

「え?」

「食後の一服がまた旨いんだよね。里緒奈も吸う人だから、もしかしたら吸いたいのかと思ってさ」

さすがそれも分かってらっしゃる。
最近は節約のために吸うのを控えていたのだけど、くれるのなら遠慮なく。

「では頂きます」

開かれた箱から一本手に取り、口に加える。
すると、すかさず目の前に火のついたジッポが差し出された。

「あ、ありがとう」


って、ホストか!

と、突っ込みを入れそうになったが、すうっと煙を吸い込むと久しぶりの煙草にクラクラっとしてしまい、なにも言えなくなった。

が、しかし旨い。
貰い煙草だからか余計に旨い。