そりゃそうだけど。

ならタクシーに突っ込んじゃってくれれば良かったのに。
付き合ってもいない男の家に泊まるって、こんな場面、誰かに見られてたら誤解されてしまう。


……って私が一番悪いんだよね。

記憶無くすくらい飲んじゃったんだから。
偉そうに言えたクチじゃないか。


「あ、でも安心して?里緒奈に変なことしてないから。俺はソファに寝たし」

気になっていたことを、先手を打たれたみたいに言われた。
岡田さんの自己申告により、さらに安心する。

「それ聞いてホッとしました」

「記憶のない酔った女を抱くほど鬼畜じゃないよ。ましてや里緒奈とはまだ「お友達」だしね。……でも、今後はそうとは限らないから」

そう言うと、ふう、と白い息を吐いて煙草を消し、

「だから、覚悟しといてね」

と言って満面の笑みを浮かべた。


言われたこちらは恐怖である。

もしかしたら襲うかもよ、なんて遠回しに言われたらそりゃ背筋も凍るって。
岡田さんの前では飲み方を考えなければいけない、そう思った。

「さ、ご飯食べるか。大したものじゃないけど里緒奈の分もあるから、一緒に食べよう」

「え?岡田さん自炊出来るんですか?」

「は?何年一人暮らししてると思ってるの。出来なきゃ生きていけないでしょ」

その言葉が胸に突き刺さった。
とてつもないダメージである。

なんと、女子力まで身につけていたとは。
いやはや脱帽。そしていつもコンビニ飯な私、恥ずかしい!

用意された朝ご飯は、白米に卵焼きに焼き鮭(大根おろし付き)、ほうれん草のお浸しに、豆腐とわかめの味噌汁。
お洒落なランチョンマットの上に、料理に合った皿に綺麗に盛り付けられて置いてある。

レストランか、ここは。
女子力高すぎるでしょ。

女であることが非常に申し訳なくなってしまった。